大人気作家の江國香織さん、みずみずしい感性、口にだせない秘めた女心、どこか滑稽な男の恋心を描く。
一度その作品を読むと、虜になってしまう魅力ある作家さんです。
ビックリしますが、数十年前に書かれた江國香織さんの書いた小説は、令和になっても、ちっとも色あせていません。
私なむが江國香織さんを初めて読んだのは高校時代。
それから数十年、ずっと江國香織ワールドにハマりきっているなむがおすすめします
作品が出版された年に起こった事件や社会情勢についても書いていますので、当時の社会背景もわかります。
普通?じゃない夫婦の物語『きらきらひかる』
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【あらすじ】
妻の笑子はアル中、夫の睦月はホモ
合意のもと結婚した夫婦の日常の葛藤を描いた物語
【恋愛のかたち】
普通じゃない?夫婦のかたちが書かれている。でも普通の夫婦って何だろう?
『きらきらひかる』の単行本が出版された今から約30年前、1991年(平成3年)は、バブル経済の崩壊が明らかにあり、湾岸戦争が始まり、大国ソ連が崩壊した激動の年でした。
当時、”ホモの男性とアルコール依存症の女性の結婚”という内容は、センセーショナルな小説でした。
驚きの内容なのに、受け入れやすく読みやすいのは、繊細な感覚で研ぎ澄まされた江國さんの文章が、上手く生きるのが難しい夫婦二人の感情を表現しているからだと思います。
普通と普通じゃない恋愛・夫婦の境界線って何なのか?『きらきらひかる』をとおして、中学生・高校生が今から考えてみるのをおすすめ
令和になっても話題が尽きない問題ですねよね
夫の睦月とその恋人紺くん、そして妻の笑子のその後が描かれた短編小説があります。『ぬるい眠り』にある短編です。
睦月と笑子と紺くんの三人の関係には「え~!」と驚きの展開が待っていますよ。
小中学生の恋愛物語『こうばしい日々』
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【あらすじ】
中編2編
アメリカに住む11歳の少年ダイ
日本の小学生から中学生になる少女みのり
同じ年代の男女二人の可愛い恋愛物語
【恋愛のかたち】
男の子と女の子の恋愛レベルの違い
『こうばしい日々』は、大人の恋愛を書き出すイメージの強い江國さんが書いた10代の少年少女の物語です。
同じくらいの年齢の二人なのに、少年のダイは、恋愛に対して「なんでだろう?」「どうしてだろう?」とまだまだ疑問の方が多いのですが、それに対して、少女のみのりは、恋愛に対してわからないことも多いけれど、好きな人は好きと自分の恋する気持ちに自信をもっています。
中学生や高校生は、可愛らしい二人の恋愛にどこか共感しながら読める本だよ
大人になると難しくなる友情と恋愛『ホリーガーデン』
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【あらすじ】
しつこく失恋を引きずる果歩と、先のない不倫を続ける静江
性格・恋愛観もちがう幼なじみ大人の女二人の友情と恋愛物語
【大人の女の友情】
友達だからこそ気をつかう関係になっていく
友達との付き合い方や恋愛って、どうして大人になるほど難しくなるのかしら?と思ったことありませんか?
『ホリーガーデン』は、大人の女の友情と恋愛の難しさがわかる物語です。
どんよりしたこじらせ気味の女ふたりの友情と恋愛に、さわやかな風として登場する年下男子のキュートな中野くんが登場し、物語を盛り上げてくれます。
「「大人だから」ひとりで辛さを乗り越えなくちゃ」と思っている果歩がつぶやく一言一言は、大人になる階段を登っている中学生・高校生にもグサリとするはず。
中学生・高校生は、『ホリーガーデン』を読んで、大人になると若い頃には味わえなかった楽しみも味わえる反面、考えられなかった辛さも経験しなくちゃならないのを覚悟してくださいね
よその家族の物語『流しのしたの骨』
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【あらすじ】
ことちゃん、姉そよちゃん、姉しま子ちゃん、弟の律、4人姉弟の家族の日常は、波乱もありながらもマイペースにすすんでいく家族の物語
【家族のかたち】
「よその家」である家族特有の常識がおもしろい
江國さんが書く「よその家」のおもしろさとあたたかさを感じる物語。
「そうか、家族だけにしかわからない行動や考え方があるんだ」と、それぞれの家族がもつ不思議な世界に気づかされます。
常識から考えればビックリといえば、大学生の深町直人くんに恋をする、三女ことちゃんの言動は驚きもありながら魅力的です。
深町君と手をつないでご飯を食べるために、左利きの練習をすることちゃんなんて、とっても可愛いと思いませんか?
もしかしたら自分の家は「ヘン」なのかもしれないと思っている中学生・高校生におすすめの本
だよ
でも、自分たち家族が納得して過ごしているなら、どんなに「ヘン」でもいいんじゃないかなと教えてくれる物語です
魔性の女が現れる恋愛物語『落下する夕方』
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【あらすじ】
長年付き合っていた健吾から突然の別れを告げられた梨果は、別れの原因となった華子と同居することになるのだが。
【恋愛のかたち】
魔性の女に、かき乱される突風が吹く恋愛
物語には、翌年1997年にイギリスから中国に返還される香港が出てきます。
日本から近く身近な国香港は、25年前まだイギリス領だったんですよ。
『落下する夕方』はたった一人の女性の登場で、まったく違う人生が始まってしまう恋人同士が書かれた物語です。
人生ってほんとうに何が起こるかわからない。
魔性の女、華子が出会う男性は、みな華子にメロメロになってしまうが、その男性たちをことごとく不幸にする魔性の女?華子の自由な生き方をどう思いますか?
中学生・高校生には、もしかしたらこんな魔性の女にこれから出会ってしまうかもしれないと、覚悟をしてほしい(笑)
そして魔性の女に負けない生きるパワーを蓄えておくのがおすすめ
昔の恋が気になる物語『冷静と情熱のあいだ Rosso』
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【あらすじ】
舞台はイタリア。
ノストラダムスの大予言に怯える人が多発した世紀末を目前に、一度は終わったあおいと順正の恋愛が約束通りに再び動き出すのか?
【恋愛のかたち】
昔の恋が気になって仕方ない、揺れうごく恋愛
『冷静と情熱のあいだ』の単行本が出版された1999年(平成11年)は、EUの単一通貨としてユーロが導入された年。
物語の舞台となったイタリアを含むヨーロッパは、大きな転換期を迎えた年になりました。
『冷静と情熱のあいだ』は、クールで神秘的なあおいの熱い恋愛感情が、ひしひしと真っすぐに伝わってくる物語です。
昔のちょっとした心のすれ違いで終わった恋って、時間が経つにつれて気になって仕方なくなってきませんか?
そして「2000年」「30歳」など人生の節目を迎える時だからこそ、盛り上がってくる昔の恋への恋愛感情は抑えられますか?
主人公あおいの心の揺れ動き、ロマンティックな恋愛に、どっぷりはまってしまう中学生・高校生は多いはずだよ
辻仁成さんの書く『冷静と情熱のあいだ Blu』と対になった作品です。
ふたつの小説は結末の印象がまったく違うので、必ず2冊セットで読んでほしい。
私は江國さんのRoseを読んでから、辻さんのBlueを読むのがおすすめ。
母親の燃えるような恋に漂流する物語『神様のボート』
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【あらすじ】
ママ(葉子)の骨ごと溶けるような恋から生まれた私(草子)。消えてしまったパパを待つ、ママと私の漂流の旅が始まる。
【恋愛のかたち】
ママ(葉子)の漂流恋愛物語でもありながら、娘(草子)成長物語
日本は不景気真っ只中だった1999年(平成11年)に単行本が発売された物語です。
経済的にもたいへんだろうに、私だったら、ぜったいに母娘ふたりの漂流生活ムリ!、娘の草子ちゃんがよくグレなかったな~と思ってしまいました。
でも、ママのように、恋に落ちたら、何もかもがわからなくなるくらい、その恋がすべての人生を送るのもアリなのかもしれません。
そんなママから伝わる「自分はママが愛した人の子ども」という愛されている確固たる自信は、草子ちゃんに生きる強さを与えていたと思います。
娘、草子ちゃんのように、だれかに愛されているという自信は、生きるパワーに必ずなると中学生・高校生に知ってほしいな
いつか、あなたが愛というそのパワーをそそげる側の人になれますように
年上女性の魅力におぼれる男子大学生の物語『東京タワー』
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【あらすじ】
大人の女性(誌史)との恋愛(不倫)を静かに突き進む透と、同世代の彼女がいながら年上女性(熟女)好きの耕二。
大人と子どものはざまにいる男子大学生二人の恋愛物語。
【恋愛のかたち】
大人の女性の魅力にどっぷりはまる、男子大学生のピュアな恋愛
年上女性に憧れる若い男の子たちは、どうして年を取ると若い女の子が好きになるのでしょうか?
10年20年後の、透と耕二の恋愛模様をみたいと思ってしまった物語です。
主人公が男子大学生の二人という設定は、女性心を書くのが上手い江國さんのなかでも珍しい小説です。
といえども、「若い大学生の男の子の心理を書くのも、江國さんはやっぱり上手いな~」と江國ワールドにどっぷりひたれます。
中学生・高校生にとってみると、魅力たっぷりの大人の女性が”憎い”と思うときもあるかもしれません
でも、自分もいつか大人の女性になるわけですから、魅力的な女性になれるよう今から準備しておきたいですね
ジャニーズの岡田准一さんと黒木瞳さんが出演し、『東京タワー』を美しく映像化した映画も話題になりました。
3姉妹の恋愛模様『思いわずらうことなく愉しく生きよ』
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【あらすじ】
麻子、治子、育子の三姉妹。
犬山家という同じ家で、「思いわずらうことなく愉しく生きよ」という家訓で育った三姉妹のそれぞれの恋愛物語
【恋愛のかたち】
姉妹でも大きく異なる恋愛事情
同じ家の中で同じように育っても、まったく違う性格・恋愛観を持つ姉妹になるおもしろさを楽しめる物語です。
また『思いわずらうことなく愉しく生きよ』は、圧倒的に女性の強さが際立つ小説です。
平成時代の象徴ともいえる、やさしい(だけ)の男たちと、自立を目指す女性たちのパワーの格差が目立ちます。
自立して社会で生きようになった女性たちに押し寄せる問題が、ぞくぞくでてきますよ。
だれが良くて、だれが悪いわけではない
中学生・高校生は、3姉妹を見習って、自分らしく生きていく、恋愛をしていくことに自信をもてるようになれるはずですよ
恋愛ダメダメ兄弟の物語『間宮兄弟』
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【あらすじ】
30歳を過ぎた、モテない男の代表のような兄弟二人の、ほのぼのとした日常が書かれた物語。
【兄弟のかたち】
二人で暮らし、二人でお互いのことを心配しあう心優しき兄弟
30歳過ぎのおじさん二人の兄弟が仲良くすればするほど、ちょっと不気味さもあり、面白くもあり、可愛らしさもあり、江國さんには珍しいユーモラスな小説です。
『間宮兄弟』の単行本が出版された2004年(平成6年)は、「冬のソナタ」をきっかけに韓流ブームがおこり、優しくて物腰のやわらかく、愛情表現が豊かでストレート、鍛えられた体に色気のある韓国男子が人気になりました。
そんな社会のなかでは、やっぱり間宮兄弟はもてない代表みたいな男なんです。
中学生や高校生は、恋愛ダメダメ間宮兄弟兄弟をやさしい気持ちで応援してあげてくださいね
佐々木蔵之介さん(兄役)、ドランクドラゴンの塚地さん(弟役)が共演した映画も、小説そのまんまが映像化されていて、とってもおもしろかったです。
【江國香織】中学生・高校生におすすめ本10冊リスト
令和時代にも変わらず新鮮な気持ちで読める素敵な江國香織さんの小説10冊を紹介しました。
中学生・高校生におすすめの本を選んでいるので、ぜひ朝読書の時間に読んでみてくださいね。
▼今回紹介した【江國香織】本リストはこちらからです
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