「男女間に友情は存在するのか?」
男子とか女子とかを分ける必要や価値観がなくなりつつある今、こんな疑問もムダかもしれません。
「男子と女子にも友情は存在します!」
と大きな声で言いたくなる、男子と女子の友情物語を集めてみました。
中学・高校入試で出題された本も多数あります。
気になった本があったら手に取って読んでみてくださいね。
児童書、ヤングアダルト(YA)ブック、中学受験出題本のおもしろさにどっぷりにハマっている私が紹介します
『この夏の星を見る』
【著者】辻村深月
【出版社】KADOKAWA
★物語の形
連作短編小説
章ごとに主人公がかわっていく
★主人公
3人の中学・高校生
【女子】茨城 亜紗は高校の2年生、天文部
【男子】東京・渋谷 真宙(まひろ)は中学1年生 学校で唯一の男子
【女子】長崎・五島列島 円華(まどか)は高校の3年生 吹奏楽部から訳あって天文部へ
★テーマ
成長・青春・友情・コロナ禍
★入試情報
2024年の高校・中学入試で多数の中学で出題された
今、自分たちのできることを懸命に、前向きに楽しむのに男子と女子も関係ない!
中学高校生たちの青春物語
コロナ禍で、思い通り、例年通りにいかない生活に葛藤する中学生・高校生が全国の「天文部」の仲間たちとパソコンを通して交流し、顔すらみたことのなかった彼らは、星・宇宙を通じて友情を築いていきます
人生は自分の思い通りに、計画通りに歩むことは難しいのですが、そんな人生をいかに楽しむのかを教えてくれます
<出版社あらすじ>
亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。
真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。
円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。
コロナ禍による休校や緊急事態宣言、これまで誰も経験したことのない事態の中で大人たち以上に複雑な思いを抱える中高生たち。しかしコロナ禍ならではの出会いもあった。リモート会議を駆使して、全国で繋がっていく天文部の生徒たち。スターキャッチコンテストの次に彼らが狙うのは――。
哀しさ、優しさ、あたたかさ。人間の感情のすべてがここにある。
『タスキメシ』
【著者】額賀澪
【出版社】小学館
★物語の形
2編の連作中編小説
前半は眞家早馬の物語で、後半は井坂都の物語
★主人公
同じ高校に通う男子と女子
【男子】陸上部で長距離選手だが、大けがを負い、長くリハビリに励んでる眞家早馬
【女子】たった一人で料理研究部として活動している井坂都
★テーマ
挫折・成長・家族・ライバル
★入試情報
2023年、鹿児島県立高校入試で出題された
★その他情報
続編がある
『タスキメシ 箱根』
『タスキメシ 五輪』
まったく違った生き方をしてきた二人、家庭環境も大きく異なる二人が料理を通してお互いを理解しあっていく
今までの生きがい(陸上)から、新しい生き方を模索している男子高校生と、そんな彼に刺激を与えてくれる女子高校生の青春物語
おいしそうな料理のシーン、迫力ある陸上シーン、悩みを抱えたティーンズたちの気持ち、大切な人を想う心など、さまざまな面から楽しめる物語でした
料理を作るのも、記録に向かって走るのも、だれかのために、だれかに喜んでほしいからという気持ちがある人は強いなと思います
<出版社あらすじ>
陸上の名門高校で長距離選手として将来を期待されていた高3の眞家早馬(まいえそうま)は、右膝の骨折という大けがを負いリハビリ中。そんな折、調理実習部の都と出会い料理に没頭する。一学年下で同じ陸上部員の弟・春馬、陸上部部長で親友の助川、ライバル校の藤宮らは早馬が戻ってくることを切実に待っている。しかし、そんな彼らの気持ちを裏切って、心に傷を抱えた早馬は競技からの引退を宣言する。それぞれの熱い思いが交錯する駅伝大会がスタートする。 そのゴールの先に待っているものとは……。
高校駅伝、箱根駅伝の臨場感溢れる描写とともに、箱根駅伝を夢見て長距離走に青春を捧げる陸上青年それぞれの思いと生き様が熱く描かれる。青年達の挫折、友情、兄弟愛……。熱い涙、しょっぱい涙、苦い涙、甘い涙が読む者の心を満たします。
読後は爽快感と希望に溢れる熱血スポーツ小説です。
●第62回青少年読書感想文全国コンクール高等学校部門課題図書
『おいしくて泣くとき』
【著者】森沢明夫
【出版社】角川春樹事務所
★物語の形
長編小説
★主人公
【男子】中学3年生『大衆食堂かざま』オーナーの息子・心也
【女子】同級生の夕花
★テーマ
家族・こども食堂・恋心・友情
★入試情報
2022年、開成中学校の入試で出題された
「こども食堂」を知っていますか?
家庭でご飯を食べるのが難しい子どもたちのために開かれている食堂です
そこにご飯を食べにくる中学生と、その食堂のオーナーの中学生
お互いに気になる存在の中学生の物語です
ストーリーには、子どもたちの人を思いやるやさしい気持ちがあふれる一方で、子どもにはどうにもならない厳しい現実があります
弱い立場の人は我慢するしかないのだろうか?
涙なしでは読めない、ほろにがい物語の後半は、温かな奇跡を呼ぶ物語になっています
<出版社あらすじ>
無料で「こども飯」を提供する『大衆食堂かざま』。店のオーナーの息子・心也は、怪我で大好きなサッカーができなくなり、中学最後の夏休みを前に晴れない気持ちを持て余している。また心也は、時々こども飯を食べにくる同級生のことを気にしていた。一人は夕花。クラスから疎外され、義父との折り合いも悪い。もう一人は金髪パーマの不良、石村。友情と恋心、夏の逃避行。大人たちの深い想い。〈子ども食堂〉から始まる思いやりの連鎖が、温かな奇跡を呼ぶ。
『たまねぎとはちみつ』
【著者】瀧羽 麻子
【出版社】偕成社
★物語の形
連作短編集
★主人公
【女子】小学校5年生のすべて平均くらいの女の子千春ちゃん
【男子】同じクラスの俊太くん
★テーマ
成長
★入試情報
2022年、成城学園中学校の入試で出題された
★その他情報
続編あり『ひこぼしをみあげて』
中学生になった千春ちゃんの物語
”ふつう”だから注目されない自分に不満はないけれど、もうちょっと自分らしさをみんなにもわかってほしいなと思う時があります。
自称「ふつうの小学生」の千春ちゃんは、近所に住むエンジニアで発明家のおじさんと、同級生の俊太くんといろんなことを話すうちに、家族や学校しか知らなかった世界がどんどん広がっていきます。
日常の生活のなかで、たくさんのことに悩んだり、不思議に思うことがたくさんある千春ちゃんが成長していく姿は、「がんばれ!」と応援したくなるほど可愛らしいのです。
自分を認めてくれる人には、素直に自分の弱い部分を見せて、助けてもらうのは、大人になる一歩なんだ前向きになれる物語
「言いたいことが言えない」「もうちょっと成長したいかな~」と思っている子どもたちに読んでほしいです。
<出版社あらすじ>
小学5年生の千春は、ふとしたことから修理屋のおじさんと知り合う。そのお店には同じクラスの俊太がいた。何かが変わった3人の特別な1年。
●産経児童出版文化賞・フジテレビ賞(2019)
●全国学校図書館協議会・選定図書(2019)
『黄色い目の魚』
【著者】佐藤多佳子
【出版社】新潮社
★物語の形
連作短編集
みのりの幼少期から高校生まで
★主人公
【女子】16歳の高校生村田みのり
【男子】みのりのクラスメイト、木島悟
★テーマ
成長・青春・友情・家族・自分との向き合い方
★入試情報
2021年、大宮開成中学校の入試で出題された
海辺の高校で、同級生として二人は出会う。学校や家庭にも居場所が見つけられない村田みのりが気になってなぜか気になって仕方ない、絵を描くのが好きな木島悟の青春物語
(本の前半はみのりちゃんの小学・中学時代の短編があります)
友情でもなく恋愛でもない。
ピュアで真直ぐな想いが痛々しくもあり、キラキラまぶしくもあり、もどかしくもある
似ていないようで、似ている男女二人が、お互いをわかり合える気持ちと、さらにわかり合いたいと思う気持ちが文章からあふれでた青春の痛々しさと美しさを味わえます
<出版社あらすじ>
海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて――。16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく。青春小説の傑作。
『with you ウィズ・ユー』
【著者】濱野 京子
【出版社】くもん出版
★物語の形
長編小説
★主人公
【女子】家族に問題を抱える中学三年生の悠人
【男子】どこか影のある朱音
★テーマ
ヤングケアラー・兄弟への葛藤・家族・ほのかな恋心・相手を想う気持ち・介護
母親の介護や家事をひとりで背負う“ヤングケアラー”問題を提起している小説として話題になった小説です。
親に翻弄される子ども、ヤングケアラーに注目した物語であり、気になる友達を少しでも助けてあげたいと思うことで、自分自身を見直しながら、社会へ目を向けていく少年の成長物語でもあります
恋する男子悠人は、朱音との出会いにより、大人の階段を登り始めるのです
悠人がどんな大人になるのか楽しみだなと思いながら読み終えました
家族に恵まれている子どもにこそ読んでほしい一冊です
<出版社あらすじ>
中学三年生の悠人は、高校受験を控えている。優秀な兄・直人や、家族を置いて家を出ていった父親、悠人でなく直人に大きな期待をかける母親、といった家族のなかで、自分の存在意義を見出せない悠人は、日課にしていたランニングの途中、公園のブランコに座る少女・朱音と出会う。どこか影のある表情の朱音に、次第に惹かれていく悠人。朱音が、病気の母親の介護や幼い妹の世話、家事をひとりで背負う“ヤングケアラー”であることを知った悠人は、彼女の力になりたいと考えるようになるが……
母親の介護に携わる“ヤングケアラー”の少女・朱音に恋をした中学生・悠人の物語を通して、「誰かを大切に思うこと、社会へ目をむける機会」を読者に提供する児童文学です。
2021年 青少年読書感想文全国コンクール課題図書 中学校の部
『ぼくのとなりにきみ』
【著者】小嶋 陽太郎
【出版社】ポプラ社
★物語の形
長編小説
★主人公
【男子】中1男子、慎重で大人っぽいサク君
【男子】クラスメイトのスポーツ万能で天真爛漫なハセくん
【女子】クラスメイト 不思議ちゃん的存在の近田さん
★テーマ
友情・家族・相手を想う気持ち
★入試情報
2018年の私立中学入試、公立高校入試で多数出題された
クラスでもちょっと外れものぽい男子と女子3人組の物語
まったく性格の違うデコボコ三人組は、お互いを知るにつれて、互いを信頼しあい友情を深めていきます
昭和時代なら男子3人、女子3人という組み合わせだったと思うのですが、令和時代は男女トリオが当たり前になりそうですね
デコボコ3人組はそれぞれ家族問題を抱えています
お互い抱える家族状況を知り、相手を思いやる心をもてるようになる優しい彼らたち
「自分だけが不幸だ、ついてない」と思っている子どもにおすすめします
<出版社あらすじ>
クラスではちょっとだけ変わり者の3人組、冒険も恋もひたむきに
慎重で大人っぽいサクと、スポーツ万能で天真爛漫なハセは、仲良し中1男子コンビ。夏休みの最終日、町の古墳へ冒険に出た二人は、謎の暗号を拾ってくる。教室で解読にいそしんでいると、いつもフシギな行動が目立つ近田さんが割りこんできて、暗号調査隊に加わることに。最初は乗り気になれないサクだったけれど、無防備な笑顔やまっすぐに歌う姿を見るうち、近田さんが気になっていく。彼女の奇行には、どうやら秘密があるようで――。
くじけそうな心に響く、青春小説の快作。
『空と大地に出会う夏』
【著者】濱野 京子 (著)
【出版社】くもん出版
★物語の形
長編小説
★主人公
【男子】小学6年生の佐合理一郎 成績はかなりいいが、目立つタイプではない。理屈ぽい
【女子】理一郎の同級生(同じクラスではない)堀川海空良(みそら)ちゃん 特徴があるわけはないが目立つ
★テーマ
家族・友達・自分探し
小学6年生の少年が、今までとは違う自分、自分らしい自分を見つけていく成長物語
大人でもありがちですが、「ぜったいこの人とは仲良くなれないよな~」と思った人が、実は信頼できる人、自分をわかってくれる人だったりすることありませんか?
自分とまったく違った価値観をもち生きている人たちがいる社会のなかで生きていく難しさと楽しさを知る物語でした
この物語は理想的な終わり方でもないかもしれませんが、リアルな物語展開なので、現実的だなと思うのです
今まで自分らしくないと思っていたことに挑戦してみたら新しい発見があるかもしれません
「自分ってどんな人なんだろう?」と、自分について気になりだしたら読んでみてください
<出版社あらすじ>
佐合理一郎(リイチ)は、言葉できちんと説明できないことやムダがきらいな小学校6年生。成績も優秀、スポーツもピアノもそつなくこなすリイチだったが、親友の準也のようには、将来の目標がもてずにいた。ピアノのレッスンの帰り道、同じ学校の海空良と出会ったリイチ。あきらかにウマがあわないタイプの女子・海空良に連れられてリイチがむかったのは、転校していった中上大智の家だった。4年生のときのある出来事がきっかけで、大智に会いたくないと思っていたリイチだったが、強引な海空良のペースにあわせているうちに、大智とも顔をあわせるようになって……ムダがきらいな少年・リイチが、寄り道ばかりの海空良や大智といった多様な人々と出会うことで、自分の生き方を見つめ、周囲の人間との関係をとらえ直す、ひと夏のちょっとした成長物語。
『あこがれ』
【著者】川上未映子
【出版社】新潮社
★物語の形
連作中編小説
★主人公
【男子】思春期直前の小学生 麦彦
【女子】麦彦のクラスメイト ヘガティー
★テーマ
成長・生きるたいへんさ
相手のために一緒に行動したり考えてくれたり、傷ついたら一緒にそばにいてくれるのは、同性の友達とは限らない!
互いの「あこがれ」に対して興味をもつ小学生の男子と女子は、現実社会にはどうにもならないものがあることを知っていく、子ども時代の終わりを告げるような物語
疑いを知らず、好きなものに一直線なのは、不条理に満ちた世界にまだまだ気づいていないから
それぞれに〈あこがれ〉の対象を持ちながら、報われずとも淡々とその事実を受けいれるほかない
自分自身に正直で、繊細な気持ちが描かれた少年少女
大人から見たら、なんでそんなことに興味をもつんだろうか?と思う、子どもの不思議な行動
麦彦とヘガティーは子どもだけど、二人ともナイーブで、ところどころ、ふとみせる大人ぽい雰囲気が魅力的!
へんな奴かもしれないけれど、気の合う友達
不思議な男子と女子ふたりの友情に引き込まれます
<出版社あらすじ>
おかっぱ頭のやんちゃ娘ヘガティーと、絵が得意でやせっぽちの麦くん。クラスの人気者ではないけれど、悩みも寂しさもふたりで分けあうとなぜか笑顔に変わる、彼らは最強の友だちコンビだ。麦くんをくぎ付けにした、大きな目に水色まぶたのサンドイッチ売り場の女の人や、ヘガティーが偶然知ったもうひとりのきょうだい……。互いのあこがれを支えあい、大人への扉をさがす物語の幕が開く。
第1回 渡辺淳一文学賞を受賞
『むこう岸』
【著者】安田夏菜
【出版社】講談社
★物語の形
長編小説
★主人公
【男子】和真 有名進学校で落ちこぼれ、中三で公立中学に転校した
【女子】和真のクラスメイト 父を亡くした樹希、生活保護を受けて母と妹と暮らしている
★テーマ
自分らしさ・成長・他者を想う気持ち・社会の不条理・貧困
★入試情報
2021年、広尾学園中学入試で出題された
始めはお互いの環境を理解できない男女二人だったが、互い悩みを知り、自分とは違った環境で育っているお互いを理解していきます
みんながみんな平等ではないし、家庭環境「貧困」によって学ぶ権利を奪われ、自由を奪われてしまう社会の不条理
仕方ないと諦めるのではなく、立ちはだかる問題に対し、中学生ができることはあるのだろうか
自分の人生を、仲間に助けてもらいながら自分で切り開いていく
たくましい中学生たちの「自分を変えたい!」という気持ちに、心を打たれます
自分も負けてられないと前向きになれます
<出版社あらすじ>
小さなころから、勉強だけは得意だった山之内和真は、必死の受験勉強の末、有名進学校である「蒼洋中学」に合格するが、トップレベルの生徒たちとの埋めようもない能力の差を見せつけられ、中三になって公立中学への転校を余儀なくされた。
ちっちゃいころからタフな女の子だった佐野樹希は、小五のとき、パパを事故で亡くした。残された母のお腹には新しい命が宿っていた。いまは母と妹と三人、生活保護を受けて暮らしている。
ふとしたきっかけで顔を出すようになった『カフェ・居場所』で互いの生活環境を知る二人。和真は「生活レベルが低い人たちが苦手だ」と樹希に苦手意識を持ち、樹希は「恵まれた家で育ってきたくせに」と、和真が見せる甘さを許せない。
中学生の前に立ちはだかる「貧困」というリアルに、彼ら自身が解決のために動けることはないのだろうか。
講談社児童文学新人賞出身作家が、中三の少年と少女とともに、手探りで探し当てた一筋の光。それは、生易しくはないけれど、たしかな手応えをもっていた――。
●第59回日本児童文学者協会賞受賞作品
●貧困ジャーナリズム大賞2019特別賞受賞作品
●2019年、国際推薦児童図書目録「ホワイト・レイブンズ」に選定
『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』
【著者】こまつあやこ
【出版社】講談社
★物語の形
長編小説
★主人公
【女子】マレーシアからの帰国子女 中学2年生の沙弥
【男子】沙弥と同級生の 沙弥の初恋相手藤枝くん
★テーマ
青春・成長・異文化・宗教
★入試情報
2019年、海城中学ほか多数の中学入試で出題された
マレーシアと日本の文化の違いに苦労する沙弥が、短歌の吟行を始めて気づく、新しい世界!
いままで当たり前に思えていたことが、不思議なこと・周りの人とは違ったことになったらどうしますか?
俳句は自分が見たままを「句」にします。
同じものを見ても、まったく違う「句」ができるのがおもしろいのです。
自分が見えている世界を、みんなが同じように見ているわけではない
だから、考えていることや価値観だって、人それぞれなんだなと、改めて感じられる物語でした。
初恋相手の藤枝くんが、相手の気持ちを考えられる人、違う文化を受け入れられる人でかっこよかったです
<出版社あらすじ>
2019年度中学入試最多出題作!栄光学園、海城、鎌倉女学院、成城、淑徳与野、桐朋、白陵、緑が丘女子、山脇学園、早稲田実業・・・・・・。
中二の九月に、マレーシアからの帰国子女になった沙弥は、日本の中学に順応しようと四苦八苦。ある日、沙弥は延滞本の督促をしてまわる三年の「督促女王」に呼び出されて「今からギンコウついてきて」と言われ、まさか銀行強盗?と沙弥は驚くがそれは短歌の吟行のことだった。短歌など詠んだことのない沙弥は戸惑う。しかし、でたらめにマレーシア語を織り交ぜた短歌を詠んでみると……。
●2017年講談社児童文学新人賞受賞作
『革命テーラー』
【著者】川瀬七瀬
【出版社】KADOKAWA
★物語の形
長編小説
★主人公
【男子】人生諦めモードの男子高校生・アクア
【女子】同級生のスチームパンク娘・明日香
★テーマ
生き方・成長・青春・家族・町活性化・ファッション
自分の生き方や人生って、だれが決めるんだろうか?
親でも先生でもない、友達でもない、学校でも社会でもない
「自分」しかいない
「自分」がどうするか、どう考えるかで人生は変わっていく!
「自分」ひとりじゃできないことだって、仲間がいれば、できることはどんどん大きくなります。
年齢や性別、好きなことに関係なく生きることが楽しくなる物語です
<出版社あらすじ>
人生は、自分の手で縫ってゆけ! 元気をくれる、愉快痛快エナドリ小説!
「自分の人生は、自分以外のだれにもゆだねるな」
今日チャレンジできなかったあのことに、明日チャレンジする勇気をくれるビタミン小説が登場!
福島の古びた商店街の仕立て屋に、突如女性用のきらびやかなコルセットが飾られた!
華美な女性下着を堂々と晒すその大胆な行為に、田舎町は大騒ぎになる。
だが、人生諦め系男子高校生・アクアは違った。彼は、幼いころから官能漫画家の母親の仕事を手伝っていた影響で、美しい服飾品やインテリアが大好きだったのだ。
コルセットの美しさに心奪われた彼は、騒ぎを企てた偏屈な老テーラー・伊三郎と意気投合。どうやら伊三郎は「コルセット」を使って、町を揺るがす大革命を仕掛けるつもりらしい。
ご近所さんのスチームパンク娘・明日香も巻き込んで、尖りまくった3人組がそれぞれの夢のため、田舎町を疾走する!
人間いろいろ、それゆえ世界は面白し!
圧倒的熱量の注目作が誕生しちゃいました!
単行本『テーラー伊三郎』改題。
『スクラッチ』
【著者】歌代朔
【出版社】あかね書房
★物語の形
連作短編小説
千暁と鈴音の物語が交互になっている
★主人公
【男子】中学3年生 美術部部長の千暁
【女子】千暁の幼なじみで同級生 バレー部キャプテンの鈴音
★テーマ
コロナ禍・ままならない人生・成長・青春
★入試情報
2023年、鹿児島県立高校入試で出題された
『スクラッチ』はコロナ禍に翻弄された中学生が主人公となっている時代を反映した作品です。
美術部の千暁くんも、バレー部鈴音ちゃんも「コロナ禍」という理由でいろいろな制限を受けた中学生活を過ごし、モヤモヤした気持ちでいっぱいになっています。
中学時代にしか経験でいないこと、感じられないことを奪われてしまった中学生たちのむなしさもあり、さらにそれに負けずできることに挑戦していく力強さも書かれています。
コロナ禍だからこそ知った人と人と関わり方や価値観の違いもきちんと書かれていたのが、リアル感がありよかったです。
<出版社あらすじ>
コロナ禍で「総体」が中止になったバレー部キャプテンの鈴音。美術部部長の千暁は出展する予定の「市郡展」も審査が中止。「平常心」と自分に言い聞かせ「カラフルな運動部の群像」の出展作を描き続ける千暁のキャンバスに、鈴音が不注意から墨を飛ばしてしまい…。コロナ禍で黒く塗りつぶされた中三の夏。そのなかでもがきながら自分たちらしい生き方を掴み取っていく中学生たちの、疾走する”爪痕”を描く物語。
全国学校図書館協議会選定図書
第47回日本児童文芸家協会賞
第69回青少年読書感想文全国コンクール課題図書ほか
『バスを降りたら』
【著者】眞島めいり
【出版社】PHP研究所
★物語の形
長編小説
奈鶴と律、交互にふたりの視点で書かれる物語
★主人公
【男子】中学生の律(りつ)
【女子】中学生の奈鶴(なつる)
★テーマ
思春期・青春・成長・ほのかな恋
★入試情報
2024年、山口県立高校入試で出題された
通学のバスの中で、交差する中学生の男子と女子の想い
お互いが気になるふたりだけど、相手への気持ちは全く正反対のふたりなんです
友情物語ではないのですが、男女ふたりが、それぞれ自分の生きる道を模索する姿に勇気をもらえます。
挫折感を抱きつづけるやるせない思い、学ぶ意味、将来のこと、気になる人のことなどなど、思春期にひとりでモンモンと考えてしまっていたふたりが、周りの人たちとふれあい、人との会話を通して、今の自分を見つめなおし、新しい自分の人生を築き始める
清々しい青春成長物語でした
<出版社あらすじ>
「通学のバスの中で見かけるあの人みたいになりたい……」奈鶴(なつる)はバスで席を譲る律(りつ)の姿を見て名前も知らな律のことが気になりはじめる。一方、律は自分が落ちた中学の制服を着た奈鶴のことを少し目障りに感じている。奈鶴と律はバスの中で見たお互いの姿をきっかけに大切なことに気がつきはじめる。男女ふたりの視点で描かれる、一歩前に踏み出す勇気をくれる青春成長ストーリー。バスを降りたふたりは、新たな一歩を踏み出す。
『階段ランナー』
【著者】吉野万理子
【出版社】徳間書店
★物語の形
連作短編小説
奈鶴と律、交互にふたりの視点で書かれる物語
★主人公
【男子】高校生 元水泳部の奥貫広夢くん
【女子】広夢の同級生 卓球部の三上瑠衣ちゃん
★テーマ
思春期・青春・成長・ほのかな恋・家庭・挫折
高校2年生の男女ふたりの助け合いが、明るい希望をもたらしてくれる物語
家庭の事情で水泳部を辞めてしまっている広夢くんと、とある理由から卓球をやめてしまっている瑠衣は、互いの事情を理解し、互いの弱い面を指摘しあいながら友情を深めていきます。
自分ひとりではどうにもならない、お互いの苦しみを理解し、助け合うふたり
ふたりだからこそ強くなっていくのに憧れ、うらやましくなりました。
自分の弱い面をみせられる人って貴重ですし、そんな人がいるって幸せです。
<出版社あらすじ>
家族のトラブルで水泳部を退部した奥貫広夢。卓球全日本選手権で突然、体の異変に見舞われた三上瑠衣。高校二年生の二人はそれぞれに悩みを抱えていた。
前向きになるきっかけを作ってくれたのは階段との出会いだ。
「決意の階段」「勝負の階段」「あきらめない階段」――。
社会科教師、高桑がブログで紹介する記事を読むうちに、二人は階段に魅了されていく。
ある日、高桑から「京都駅大階段駈け上り大会」の存在を教えられる。171段をチームでダッシュするタイムアタック戦だ!
『ブラザーズ・ブラジャー』
【著者】佐原 ひかり
【出版社】河出書房新社
★物語の形
2つの連作中編小説
★主人公
【女子】高校一年生のちぐさ
【男子】父の再婚により弟になった晴彦
★テーマ
思春期・青春・成長・家庭・自分さがし
ある日、弟になった晴彦がブラジャーを着けているところに遭遇!
「ファッション!」だという晴彦に戸惑う姉のちぐさ
なかなか面白い展開になりそう!と導入部分でギュっと心をつかみ、奥深く、いろんなことに気づかされる物語
お互いに気遣い、どこか遠慮をしてしまう、義理の兄弟というふたりの関係性だからこそ生まれる感情が、やさしいのです。
ありのままの自分を他人に理解してもらうことの難しさ、そしてわかってもらえたときの嬉しさが感じられます。
<出版社あらすじ>
父の再婚で新しい母・瞳子さんと弟・晴彦と暮らすことになった、高校一年生のちぐさ。
ある日、晴彦がブラジャーを着けているところに遭遇する。
「ファッション! ふつうにおしゃれでやってるんだよ!」
「うそ! いったいブラのどこがおしゃれだっていうのよ」
「どこって……。デザインとか、形とか、おしゃれじゃん……。刺繍だって、すげえし……」
戸惑いながらも晴彦を「理解」しようとするちぐさだったが、ある言葉で傷つけてしまい――。
弟とか、男の子とか、関係ない。ただ目の前の「あなた」に向き合いたい!
ちぐさは意を決して――!?
第2回氷室冴子青春文学賞大賞
『世界は「 」で沈んでいく』
【著者】櫻 いいよ
【出版社】PHP研究書
★物語の形
長編小説
★主人公
【女子】中学2年生の凛子
【男子】クラスメイトの和久井君
★テーマ
友達・成長・自分さがし・恋
★入試情報
2024年、浦和明の星女子中学校の入試で出題された
ひとりが好きってなかなか理解されない
大勢が好きな人もいれば、ひとりが好きな人だっているのに……
友達がいっぱいいるのが「良い」という価値観を、ぶち壊してくれます
ひとりが好きっておかしいことなのかな?って悩んでいる人がいたら、ぜひぜひ読んでほしいです
<出版社あらすじ>
好んでひとりで過ごしていたのに「いじめられている」と誤解され、都会から海辺の町に引っ越すことになってしまった、中学1年生の凛子。家族を心配させまいと、今度こそ「友だち」を作ろうと努力するが……。「友だちは本当に必要か?」悩みもがきながらも、自分なりの答えを探していく――。胸が締めつけられる青春小説。
『線は、僕を描く』
【著者】砥上 裕將
【出版社】講談社
★物語の形
長編小説
★主人公
【男子】大学生の青山霜介
【女子】霜介の師匠の孫、千瑛
★テーマ
成長・自分さがし・再生・青春・水墨画・芸術
★入試情報
2022年、中央大学付属中学校の入試で出題された
★その他情報
続編あり『一線の湖』
あれから2年 大学3年生になった霜介の物語
黒と白の「水墨画」の魅力がたっぷり味わえます
「水墨画」ってこんなにも面白いんだな~と、新しい発見がありました
そしてその「水墨画」というある意味狭い世界のなかで、繰り広げられるライバルとの争いや、才能への嫉妬、そしておもいどおりにいかない芸術の難しさがふんだんに盛り込まれている物語です
けっしてドロドロしたものではなく、なぜか爽やかな空気感があり、そのなかに、白と黒の迫力なるパワーがおしよせてくる力強さも感じられる不思議なおもしろさがあります。
<出版社あらすじ>
小説の向こうに絵が見える! 美しさに涙あふれる読書体験
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。
水墨画とは、筆先から生みだされる「線」の芸術。
描くのは「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。
2020年本屋大賞第3位など
『わんダフル・デイズ』
【著者】横関大
【出版社】幻冬舎
★物語の形
連作短編集
★主人公
【女】盲導犬訓練施設で働くトラブルバスターズ 研修生の歩美
【男】盲導犬訓練施設で働くトラブルバスターズ 訓練士の阿久津
★テーマ
成長・自分さがし・ミステリー・盲導犬
町で起こった盲導犬がらみの事件や出来事を、トラブルバスターズの男女二人が解決する6つの物語
盲導犬の凛々しい活躍や、生きものとしての可愛らしさとともに、心あたたまる真実が事件解決のキーポイントになっています
ちょっとした謎解きもおもしろいのですが、この本の一番の魅力は、物語を読めば盲導犬のあれこれを知れること!
盲導犬に興味をもつキッカケとしてもおすすめです
<出版社あらすじ>
「犬だって嫌なことがあったら吠えますよ」
盲導犬訓練施設「ハーネス多摩」で働く歩美は、訓練士の研修生。たくさんのラブラドールレトリバーに囲まれて、1人前になるため頑張って勉強中。ある日、盲導犬と暮らす飼い主から「犬の様子がおかしい」と連絡を受け、犬と話せるという美男子なのに不思議キャラの教官、阿久津と一緒に様子を見に行くことになるが……。
登場するのは、犬、犬、犬、犬。飼い主の隣りでお利口に職務を全うする盲導犬たちの姿を通して見えて来るのは、その飼い主、その家族など、周りの人間たちの嘘、秘密、そして、罪。
美男子教官と、たこ焼き大好き新人訓練士が、犬の謎を解きながら、人間たちの弱さ、優しさ、愚かさ、尊さに気づく、ハートウォーミングミステリ。そして、阿久津にも重くて大きな罪と秘密が実はあり……。
読み終わった後、なんでもない日常が、「ワン」ダフルに輝く横関さんらしい小説です。
『檸檬先生』
【著者】珠川こおり
【出版社】講談社
★物語の形
長編小説
★主人公
【男子】音や数字に色が見えたりする「共感覚」を持つため学校になじめない、小学三年生の少年
【女子】同じ悩みをかかる中等部3年生の少女 少年から「檸檬先生」と呼ばれる
★テーマ
成長・自分さがし・見えない障害
★入試情報
2023年、芝中学校(2回目)の中学入試で出題された
外側から見えない障害、他の人が理解しにくい障害をもつ少年の成長物語です
見るだけじゃ気づかない、話していても気づかない、理解してもらいにくい、だから孤独を感じてしまう
少年や檸檬先生のもつ、さみしさや辛さ、ナイーブな気持ちが痛いほど伝わってきます
そんな隠れた苦しみや障害を抱えながらも、自分らしく生きていこうと前向きになっていく少年の姿かた勇気をもらえます
<出版社あらすじ>
小学三年生の私は、音や数字、人に色がついて見えるせいで、クラスメートたちからいじめられ、孤独な日々を送っていた。ある日、逃げ込んだ音楽室で中学三年生の少女と出会う。彼女もまた音に色がついて見える共感覚を持っていた。檸檬色に見える彼女のことを「先生」と慕い交流することで、私の人生は一変する!
第15回小説現代長編新人賞受賞作
男子と女子の友情物語 本リスト まとめ
男子と女子の友情物語を紹介しました。
中学・高校入試で出題された本も多数あります。
紹介した本をリストにしたので、読みたい本をもう一度確認してみてください。
朝読書の時間などを利用して、気になる本があったら読んでみてくださいね
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