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梅雨の時季に長編小説を読むのに挑戦! 小学高学年・中学生におすすめ【入試出題本より厳選した21冊】

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ゴールデンウィークも終わり、ちょっとお疲れ気味の梅雨の時季、家の中で過ごす時間が長くなる梅雨の時季こそ、長編小説に挑戦!してみませんか?

長編小説だからこそ味わる、いろんな面をみせてくれる登場人物たちとじっくり向き合い、本の世界にひたってみてください。

紹介した本、21冊は入試出題本のなかから選んでいます。

入試出題本には、試験中にその後の展開が気になるくらい面白い本がたくさんありますので、難しく考えずに、一度読んでみると、ハマっちゃうはずです。

気になった本があったら手に取って読んでみてくださいね。

児童書、ヤングアダルト(YA)ブック、中学受験出題本のおもしろさにどっぷりにハマっている私が紹介します

『となりのアブダラくん』


【著者】黒川 裕子
【出版社】講談社

★主人公
小学6年生の男子、晴夜
親友にも話せない秘密を抱えている

★ページ数
210ページ

★テーマ
成長・友情・宗教・異なる文化・個性・家族・兄と妹

★入試情報
2022年、聖学院中学校の入試で出題された

最初は軽く200ページ程度の小説から読んでみましょう。

うちのクラスに転校生がやってくる!

それだけでも大ニュースなのに、その転校生はパキスタンからやってきた外国人で、日本語も話せないし、イスラム教徒なんだって!

大騒ぎのクラスのなかから、転校生のお世話係になった晴夜くんの、今までの常識を大きく超えた日常が始まります。

自分が生きているなかでは当たり前のことが、世界に目を向ければ、ふつうじゃない、ヘンなことだったりする

自分の今の世界がすべてじゃないって実感できる本です。

『太陽と月~サッカー・ドリーム~』

【著者】はらだみずき
【出版社】小学館

★主人公
小学6年生の月人

★ページ数
208ページ

★テーマ
自分探し・成長・ライバル・サッカー・祖父・将来の夢・友情

★入試情報
2023年、長崎県立高校の入試で出題された

★その他情報
続編『太陽と月 ~ジュニアユース編~』がある

まだまだまだ、200ページちょっとだから、あっという間に読めちゃうかな?

この本『太陽と月』の主人公は、ほかの人からみたら、高身長で恵まれた体形なのに、自分自身はまったく自信がない少年、月人くん。

「おれなんて」っていつも思ってしまう月人くん。

あれ、これって自分のこと?って思った人におすすめの本です。

自信なし男子の月人くんが、期待の星たちが集まるサッカーの合宿に参加し、ライバルたちと競い合うなかで、徐々に自分らしさをみつけ、自信をつけていきます。

そして、いつも月人くんをそばで見守ってくれる祖父のアドバイスは、長く生きてきた経験に伴った的確なもので、さらに愛情がこもっていて、読者の心にしみいるはずです。

「明日に向かってキックオフ!」と叫びたくなります。

『夜明けをつれてくる』

【著者】吉田桃子
【出版社】講談社

★主人公
小学5年生の美咲ちゃん
人前で自分の気持ちが上手く話せない

★ページ数
210ページ

★テーマ
成長・犬・家族・ペット

★おすすめ世代
小学生・中学生

★入試情報
2022年、山手学院中学校の入試で出題された

みんなの前で、人の前で、言いたいこと、伝えたいことをはっきりと言えないと悩んでいませんか?
だれも、自分の気持ちをわかってくれないとイジイジしていませんか?

話すことに悩みを抱える少女、美咲ちゃんの物語です。

唯一の友達だったペットの犬が死んでしまい、そのショックから立ち直れない美咲ちゃん。
心のよりどころがなくなり、さらに殻にこもっていしまう美咲ちゃんの前に、死んだ犬にそっくりの犬が現れる!

そんな奇跡に遭遇し、美咲ちゃんは驚きの行動をしてしまうのです。

しかし、それをきっかけに自分のことだけしか考えてなかったと気づき、成長していく美咲ちゃん。

それを見守る家族の温かさ、優しさがステキでした。

特にお兄ちゃんがカッコよかったな~。

『ベランダに手をふって』

【著者】葉山エミ
【出版社】講談社

★主人公
父親が亡くなり母親とふたり暮らしの輝(ひかる)くん、小学5年生

★ページ数
178ページ

★テーマ
成長・母と二人暮らし・男女の友情・祖父

★入試情報
2022年、青山学院中等部の入試で出題された

200ページを切る短めの長編小説ですが、小学生のナイーブな気持ちがていねいにかかれていて、読んでよかったな~と素直に思える物語です。

母親と暮らす輝くんのピュアな優しい気持ちは、母や祖父母と言った家族や、学校の友達に向けられています。

また、輝くんとおなじように、父親を事故で亡くし母と二人暮らしのクラスメイト田村香帆ちゃんとの関係もこの物語のキーになっています。

だれかの気持ちになって、行動する。

カンタンなようで勇気がいることですが、自分だけのためじゃなく、他のだれかをおもいあえる輝くんの姿は、読んでいてほんわかと温かい気持ちにさせてくれます。

『8部音符のプレリュード』

【著者】松本祐子
【出版社】小峰書店

★主人公
中学2年生 優等生の果南(かなみ)ちゃん
部活は吹奏楽部

★ページ数
227ページ

★テーマ
友情・恋・成長・挫折・音楽

入試情報
2022年、江戸川女子中学校の中学入試で出題された

突然現れた転校生が、今までの自分の存在を壊していく。
壊れた後に自分には何が残るのか?
『8分音符のプレリュード』は、優等生の果南の成長物語です。

天才といわれた音楽少女、透子が転校してきたことで、成績優秀で、先生の信頼も厚い優等生の果南の生き方は大きくかわります。

今までクラスで一番優秀で、親切で、先生に信頼されているという果南の自信が、ことごとく破壊されていくのです。

『8分音符のプレリュード』を読めば、自分と人を比較して身につけている自信や優越感なんて、すごくちっぽけなモノだと気づけるはずです。

『キャプテンマークと銭湯と』

【著者】佐藤いつ子
【出版社】KADOKAWA

★主人公
中学生のサッカー少年、周斗

★ページ数
248ページ

★テーマ
成長・サッカー・ライバル・友情

★おすすめ世代
小学生・中学生

★入試情報
2020年から多数の中学校の入試で出題されている

『月と太陽』とは違った楽しみが味わえる、サッカーがらみの物語を紹介します。

ページ数は250ページ程度で、長編小説に慣れてきたら軽くクリアできるはずです。

なによりもこの本は、主人公の気持ちが想像しやすく、物語に入りこめるおもしろさがあります。

中学生になって、新しく加入した  君にキャプテンマークをとられてしまった周斗くん。
ショックで親にも言えず、仲間たちともギクシャクしてしまいます。

そんなときに、銭湯で知り合った大人(青年)たちと交流が始まり、学校、家族、サッカーチームとはちがった新しい世界を知っていきます。

人生は思い通りにはいかないし、自分だけがつらいわけじゃない、挫折してこそ気づかされる、たくさんのことがある。

若いうちに知っておけば、挫折や失敗なんて怖くなくなるはずです。

『夜空にひらく』

【著者】いとうみく
【出版社】アリス館

★主人公
17歳の鳴海円人
暴力事件を起こし、家庭裁判所に送致されたのち試験観察処分となった

★ページ数
256ページ

★テーマ
家族・成長・心の傷・罪を許す心

★おすすめ世代
中学生・高校生

★入試情報
2022年、山手学院中学校の入試で出題された

ページ数は多くありませんが、生きる難しさを問いてくる、「う~ん」と考えてしまう物語です。

とはいっても、物語として魅力があり、読むのは難しくありません。

アルバイト先で問題を起こし逮捕されてしまった円人は、補導委託先の深見静一さんの家(煙火店(花火の製造所)を営む)で住みはじめ、仕事も始めます。

実は、母が出ていき祖母と二人暮らしの少年は、家族の温かさを知らないのです。

そしてまた、深見さんも、家族に関わる傷を抱えています。

深見さんや仕事仲間たちと家族のように食事をして、仕事をして、彼らとの会話を通して、人と人との交流の温かさ、おもしろさ、信頼を知っていく少年の物語です。

「人生は一度失敗したら、もうダメなのか?」

キレイごとといわれようとも人を許すこと、愛することの大切さが伝わり、涙がこぼれてしまいました。

『西の魔女が死んだ』

【著者】梨木香歩
【出版社】新潮社

★主人公
中学生の少女、まい
友人関係のモヤモヤから、学校へ行けなくなっている

★ページ数
文庫本240ページ

★テーマ
成長・祖母・暮らし・不登校

★入試情報
2022年、明治学院大学中学校の入試で出題された

文庫本という小さい本のサイズに初挑戦するのにおすすめの一冊です。

まだまだ200ページ代の小説だから、読みやすい!

学校へ行けなくなり、気分を変えるためにと、ひと月ほど、西の魔女(おばあちゃん)のもとで過した。

おばあちゃんとの生活は、魔女修行そのもの?!

「何でも自分で決める」がモットーの魔女との生活のなかで、まいは自分らしい生き方を見つけていきます。

自分で決めたから、だれのせいにもできない。

大人になるって、こういうことなのかな~と感じられる本です。

そして、文庫本を読み始めるのも大人の一歩です。

『車夫』

【著者】いとうみく
【出版社】小峰書店

★主人公
ひとりぼっちになり、高校を中退することになった吉瀬走

★ページ数
単行本254ページ
文庫本256ページ

★テーマ
自分探し・成長・仕事・仲間・青春

★おすすめ世代
中学生・高校生

★入試情報
2023年、城西大学付属城西中学校の入試で出題された

★その他情報
文庫本あり
続編2と3があり、シリーズ化している

母親が突然消えてしまい、高校に通うことすらできなくなってしまった走くんは、陸上部OBの紹介で、イケメンでないと採用されない(笑)という「車夫」の仕事を始めます。

住み込みで働き始めた走くんは、波乱万丈の自分の人生と同じような、お客様の人生いろいろを知りながら、そして、「車夫」の仲間たちの温かさにつつまれ、成長していきます。

走くんの、ちょっと変わった青春の清々しさがまぶしい!

とにかく少年の周りの人たちが、おもしろくて、優しくて、カッコいいのも、この小説の魅力です。

社会には、10代の人でも、経済的に恵まれず学校へ行けないが、自分の仕事に誇りをもって、生きている人たちもいます。
だれもが当たり前のように学校に通っているわけではありません。

物語のおもしろさとともに、さまざまな生き方を教えてくれる本です。

おもしろくて、あっという間の250ページでした。

『むこう岸』

【著者】安田夏菜
【出版社】講談社

★主人公
有名進学校で落ちこぼれ、中三で公立中学に転校した和真

★ページ数
258ページ

★テーマ
自分らしさ・成長・他者を想う気持ち・社会の不条理・貧困

★おすすめ世代
小学生・中学生

★入試情報
2021年、横浜雙葉中学校の入試で出題された

★入試情報
2021年、広尾学園中学入試で出題された

みんながみんな平等ではないし、家庭環境「貧困」によって学ぶ権利を奪われ、自由を奪われてしまう社会の不条理をとことんぶつけてくる物語です。

名門私立中学から落ちこぼれた和真と、生活保護を受けて母と妹と暮らしている樹希。

まったく違った生活をしている二人は、お互いの環境を理解できなかったのですが、互いの悩みを知り、お互いを理解していきます。

仕方ないと諦めるのではなく、立ちはだかる問題に対し、中学生ができることはあるのだろうか?

自分の人生を、仲間に助けてもらいながら自分で切り開いていく彼ら。
たくましい中学生たちの「自分を変えたい!」という気持ちに、心を打たれます。

自分も負けてられないと前向きになれるはずです。

『ピアノをきかせて』

【著者】小俣麦歩 
【出版社】文藝春秋社

★主人公
小学5年生の響音ちゃん

★ページ数
226ページ

★テーマ
成長・家族・姉妹・祖父母

★入試情報
2021年、晃華学園中学校の中学入試で出題された

ページ数250ページ以下の物語でも、家族愛に胸がつまるものもあります。

ひとつのつまづきが家族を一気に壊してしまう。
だれにも起こりうるかもしれない、家族の一大事をどう切り抜けるのでしょうか?

音に対する感受性が豊かな響音ちゃんは、ある日、美しく大好きな姉のピアノの音が変わっていることに気づく。
その姉のピアノの音の変化は、家族にも大きな影響を与えていくのです。

響音ちゃんは自分を表現することで、姉や家族をもう一度つなげ合わせようとするのですが……。

姉や家族に、響音ちゃんの気持ち・声は響かせることができるのか?
響音ちゃん一家は、みんなの音を聞きあうことで家族の和をとりもどせるのか?

親になること、子どもになることも、初心者ばかりだから失敗もあるんだなと素直に思える物語です。

親子で読み合うのにおすすめです。

『そらのことばが降ってくる』

【著者】高柳 克弘
【出版社】ポプラ社

★主人公
中学生になり、顔のホクロをからかわれて教室に入れなくなってしまったソラくん

★ページ数
231ページ

★テーマ
成長・青春・友情・俳句・不登校・個性

★入試情報
2022年、桜蔭中学校の入試で出題された
2023年、静岡県・広島県の県立高校の入試で出題された

入試では多くの中学・高校で出題されている物語です。

かといって、小難しいことが書かれているわけではなく、俳句を通して、思ってもみなかった仲間ができ、成長していく中学生のおはなしです。

自分に自信が無くてウジウジしている少年ソラと、個性たっぷり元気いっぱいの少年ハセオ

友達にならなそうな二人が友情を深めていくのに、青春を感じます。

最初にみたとき「うわっ!」「ちょっと違うかも」「関わらないでおこう」なんて思った人が、気づくと一番の仲良しになっているかもしれません。

人と人っておもしろいです。

そして、俳句の魅力もたっぷり楽しめます。

テレビ番組『プレパト』で俳句に興味をもっていたら、ぜひぜひおすすめです。

『わたしの気になるあの子』

【著者】朝比奈 蓉子
【出版社】ポプラ社

★主人公
小学6年生の瑠美奈ちゃん

★ページ数
210ページ

★テーマ
多様性・女の子・普通とは・友達

★入試情報
2022年、浦和明の星中学校の入試で出題された

ある日、クラスメイトの詩音ちゃんが坊主頭で登校してきた!

瑠美奈ちゃんはビックリ
そもそも詩音ちゃんは転校生で、クラスになじまず孤立していたのに、ますます浮いてしまう。

ふだんから男女差別についてイヤな思いをしていた瑠美奈は、詩音が坊主頭にしてきた理由を知って、なんとか詩音ちゃんを助けたいと思い驚きの行動にでます。

「女の子らしく」「男の子らしく」「学生らしく」「普通にして」と言われて、それをなんとなく受け入れているけれど、でも、女の子らしくって?男の子らしくって?ふつうって?なんなんだろうと考えてしまいます。

にしても、友達のことを思い、助けたいと行動する瑠美奈ちゃんがカッコイイのです。

『ぼくのまつり縫い』

【著者】 神戸遥真
【出版社】偕成社

★主人公
手芸好き男子の中学1年生、針宮優人

★ページ数
166ページ

★テーマ
多様性・男の子・普通とは・友達

★入試情報
2021年、女子美術大学付属中学校の入試で出題された

★その他情報
シリーズ化している
2作目『ぼくのまつり縫い 手芸男子とカワイイ後輩』
3作目『ぼくのまつり縫い 手芸男子と贈る花』完結巻

166ページくらいなら、本も軽く(重さ)、気分も軽く読み始められます。

内容も、爽快!スッキリするのでおすすめです。

本当は手芸が大好きな針宮くん。でも男の子だし、中学の新しいお友達とも仲良くするためにもとサッカー部に入部しますが、サッカーにはまったく興味がわかず、怪我をしてしまいます。
ケガの功名?なのか、偶然、手芸部のお手伝いをしたのをきっかけに針宮くんは手芸部の活動に参加しはじめます。
でも、そのことをサッカー部の男友達カイト君には言えません。

みんなから外れたくない、みんなと同じでいたい。

目だったり、人と違う行動をすることに恐怖を感じるくらいな気持ちってわかります。
でも自分らしくないことをし続けるのは、もっと辛くて恐怖なのかもしれないし。

ただ、私はこの本を読んで、自分の友達を信じられるかどうかが、ありのままの自分をさらけだす勇気がでるポイントじゃないかなと思いました。

ちなみに、大人目線でいうと、あえて自分の秘密をさらけだす必要のない場合もあると思いますよ。

シリーズ化していて、主人公の針宮くんが中学2年生、3年生となっていきます。
針宮くんのその後が気になったら、あわせて読んでみてください。

『マイブラザー』

【著者】草野たき
【出版社】ポプラ社

★主人公
中学2年生の海斗くん

★ページ数
262ページ

★テーマ
思春期・成長・家庭・自分さがし・友情

★入試情報
2024年、専修大学松戸中学校の入試で出題された

ヤングケアラー(通常は大人が行うと考えられている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと)の問題物語とおもいきや……。

主人公の海斗くんは、家族の事情をきっかけに、エリート中学の受験を諦め、中学に入ってからは新たな目標もみつからず宙ぶらりんな毎日を、5歳児の弟の面倒をみて紛らわしています。

そんなあるとき、保育園時代の幼馴染5人と嫌々ながら同窓会をすることに。

同窓会で会ったメンバーたちも、みな、人生の壁にぶち当たっていた!

14歳たちの今は、今しか味わえない青春の苦みと楽しさなんです。

自分だけが苦しいわけじゃない、自分だけがモヤモヤしているわけじゃないと思うと、ちょっと楽になれます。

『たまごをもつように』

【著者】まはら三桃
【出版社】講談社

★主人公
中学生の早弥(さや)ちゃん

★ページ数
258ページ

★テーマ
成長・弓道・友情

★入試情報
2020年、大宮開成中学校の入試で出題された

250ページちかくになると、物語にも厚みがでてきます。

中学生のきらめく青春生活にどっぷりひたってみましょう。

自信がない不器用だけど頑張り屋さんの早弥(さや)。
弓道の才能に恵まれているがスランプに陥っているトラベルメーカーの実良(みら)。
黒人の父をもち、武士道と真っすぐに向き合う少年、春(はる)。

まったく異なる性格の中学弓道部男女3人は、弓道をとおして徐々に心を通わせていきます。

たまごのように、こわれやすい心がぶつかりあう中学生3年間の青春小説です。

『ある晴れた夏の朝』

【著者】小手鞠るい
【出版社】偕成社

★主人公
日系アメリカ人のメイちゃん

★ページ数
206ページ

★テーマ
原爆・戦争・人種・ディベート

★入試情報
2020年、麗澤中学校の入試で出題された

原爆投下について賛成か反対か、考えたことありますか?

物語の舞台はアメリカ
アメリカに住む8人の高校生が、広島・長崎に落とされた原子爆弾の賛成、反対をディベートする物語です。

ディベートに参加するのは、日系アメリカ人のメイちゃんをはじめ、アイルランド系、中国系、ユダヤ系、アフリカ系と、そのルーツはバラバラ。

原爆投下から人種差別、真珠湾の戦争、満州国でも日本の行いなど、さまざまな問題が提起され、ディベートは盛り上がっていきます。

原爆投下の日にちと場所しか知らないという人にこそ読んでほしい本です。

自分の意見でみんなを納得させる話術や、駆け引きなど、ディベートのおもしろさもにも興奮できます。

日本は世界で唯一の国なんだから、原爆についてもっと真剣に向き合うべきですよね。

『あしたの幸福』

【著者】いとうみく
【出版社】理論社

★主人公
父が交通事故で亡くなり、ひとりぼっちになってしまった中学2年生の雨音ちゃん

★ページ数
287ページ

★テーマ
成長・家族・見えない障害

★入試情報
2022年、江戸川取手中学校の中学入試で出題された

長編小説に慣れてきたなと思ったら、300ページ近い長編を読んでみましょう。

二人きりで暮らしていた父親が突然交通事故で亡くなったら……。

ひとりぼっちになった少女と暮らし始めるのは、幼い頃に別れた母親と、父親の婚約者!

不思議な家族生活がスタートします。

ひとりぼっちになったことで気づく母親の愛や、父親の愛。

当たり前や普通を通り越した先に、大切なことが見えてきます。

『りぼんちゃん』

【著者】村上雅郁
【出版社】フレーベル館

★主人公
小学6年生の朱理ちゃん

★ページ数
320ページ

★テーマ
成長・友情・家族・家庭内暴力

★おすすめ世代
小学生・中学生

★入試情報
2022年、跡見学園中学校の入試で出題された

とうとう300ページを超えた長編小説です。

でも心配ありません。
意外な事実や、事件的内容展開に引き込まれ、どんどん読み進められるはずです。

体が小さくて、クラスのなかでも「子ども」扱いをされている朱理ちゃんは転校生理緒ちゃんのお世話係に任命されて、大はりきり。

理緒ちゃんに何かと気を遣い、がんばるのですが、でも、理緒ちゃんはなんだか悩みを抱えているみたいなんです。

「子どもの私でも解決できることなのかな?」

友達のちょっとしたシグナルに気づいてあげ、ただただ理緒ちゃんを助けてあげたい、幸せになってほしいと願う、朱里ちゃんのいじらしさや素直な気持ちが心に響きます。

朱里ちゃんのように友達を想う気持ちをもてる人でいたい。

そして自分に何かあったら、友達を信頼して、大人を信頼して、声をあげる勇気をもってほしいと思うのです。

『スイマー』

【著者】高田由紀子
【出版社】ポプラ社

★主人公
小学6年生の航くん

★ページ数
359ページ

★テーマ
成長・仲間・水泳・

★入試情報
2021年、筑波大学付属中学校の入試で出題された

仲間とひとつの目標に向かって突っ走る!

350ページ越えの長い物語ですが、最高の青春物語ですので、一気に読みたくなるおもしろさです。

小学6年生の航くんは、小さなころからスイミングに打ち込んできたが、記録が伸びるごとに仲間と気持ちがすれ違い始め、さらにレースで失敗したことで、仲間とも水泳からも遠ざかってしまった。

そんななか航くんは、家族で引っ越した佐渡で同じクラスの海人、龍之介、信司から水泳のメドレーリレーに誘われる。

まったくタイプの違う4人が仲間になれば最強なんだ!

友情にグッとくるシーンもあり、友達って、自分の弱い面をきちんと見せられるからこそ、信頼しあえるんだと思えます。

主人公の航くんになりきり、自分の失敗を打ち破る勇気を教えてくれた仲間に「ありがとう」を言いたくなりました。

『朔と新』

【著者】いとうみく
【出版社】講談社

★主人公
小学6年生の航くん

★ページ数
290ページ

★テーマ
兄弟・家族・母親・成長・障害・ブラインドマラソン

★入試情報
2021年、筑波大学付属中学校の入試で出題された

この本たった209ページだったんだ。

読了後にビックリ
そのくらい、内容が濃いのです。

朔(兄)と新(弟)は兄弟です。
物語は朔が盲学校から自宅に帰ってくるところから始まります。

実は一昨年、二人が乗った高速バスが事故にあい、朔は失目してしまったのです。
その事故にあった原因が自分にあると思い続けている弟の新は、久しぶりに兄と顔を合わせます。

ぎこちなさがのこる兄弟、家族……。
そんななか、朔がブラインドマラソンに挑戦したい、新に伴走をお願いしたいと言い出します。

『朔と新』は、けっして盲目になった少年、朔の成長が物語のメインではないと思います。

なによりも盲目になった朔を中心に、困難にぶつかったときに人間の本当の姿が浮かび上がるのです。

大人だって、子どもだって、強い人間、完璧な人間なんていない弱い面や、いやらしい心、自分勝手な心をもっていることをガツンとぶつけてくるのです。

長編小説に挑戦してほしい!と紹介した本に、いとうみくさんの小説がたくさんあります。

いとうみくさんの小説は、人間の本質がみえる物語だとおもうのです。

だからこそ、感動して涙が止まらなかったり、どうしてと?怒ったり、理解できなかったり、感情が大きく揺さぶられます。

『凜として弓を引く』

【著者】碧野圭
【出版社】講談社

★主人公
高校1年生の矢口楓

★ページ数
文庫336ページ

★テーマ
成長・弓道・青春

★入試情報
2023年、都立西高校の入試で出題された

★その他情報
続編あり
2作目「凜として弓を引く初陣篇」3作目「凜として弓を引く青雲篇」

新しいことを始める時の、あのワクワクした、ちょっと緊張する時間を知っていますか?

主人公の楓ちゃんは、人見知りの女の子ですが、偶然に見つけた神社の弓道会に入会することを決めます。

人見知りの楓ちゃんは、入会するのにも、弓道を始めるのもドキドキ。

あ~、楓ちゃんのこの「初めての気持ち」ってわかるな~と共感しちゃいます。

でも、「道」をきわめるための姿勢や態度といった基本から、集中力を要する弓道の奥深い魅力にどんどんハマっていく楓ちゃん。

なにかにハマる楽しさや、それをキッカケに、新しい自分を発見したりと、人を成長させてくれるおもしろさがつまった物語です。

『ななみの海』

【著者】朝比奈あすか
【出版社】双葉社

★主人公
児童養護施設で暮らす高校生のななみ

★ページ数
320ページ

★テーマ
成長・青春・児童養護施設

★入試情報
2023年、桐光学園中学校の入試で出題された

自分の知らない世界を体験できるのも、読書のすばらしさです。
児童養護施設なんて、自分には関係ないと思った人にこそ、読んでほしい本です。

児童養護施設での生活を通して味わう現実の厳しさのなかでも、自分らしく生きることを決して忘れない、ななみちゃんの成長青春物語です。

医学部進学を目指し、お金を貯めるためにバイトをして、仲間とダンス部を楽しみ、恋をする。
満喫した高校生活を送るしっかり者のななみちゃんでも、もっと大人に甘えたいときもあったし、自分の人生を恨んだときもある。

そんな、ななみちゃんの繊細な心のうちが読むほどに伝わってきて、胸がグッとくるシーンもたくさんあります。

でも、ななみちゃんは決して下をむかず、後ろを振り向かず、前へ前へと進んでいくのです。

ななみちゃんの明るさや希望に満ちた物語ですが、一方で、児童養護施設で暮らす子供たちの心の傷や、まちがった道にひきづられてしまう子もいる現実にも目を向けた物語でもあります。

320ページの物語をとおして、自分が知らない世界が、現実には存在することを、真正面から見ることができます。

『金木犀とメテオラ』

【著者】安壇美緒
【出版社】集英社

★主人公
東京出身の成績優秀で経済的に恵まれた家庭の宮田佳乃と、北海道に住む美人で性格もいい優等生の奥沢叶

★ページ数
単子本:296ページ
文庫本:384ページ

★テーマ
青春・成長・親子・家族・友情・ライバル

★入試情報
2023年、東京都市大学等々力中学校(S特選1回)の中学入試で出題

北海道の私立中高一貫女子校を舞台にした女子たちの成長・青春物語といえば、美しく清らかな、素直で明るい女の子たちが「ごきげんよう」と言葉を交わしながら、楽しい学園生活を送っているのかしら?と思ったら、大間違いでした。

透明なバチバチと光る女のライバル心が教室内を貫く!

静かなる闘志と、そびえる高きプライドは隠しきれない!

こんなにも、思春期女子のナイーブな気持ちを描いた青春物語ってあったかな?

お互いに相手を「恵まれている」と思い、だからこそ勉強では負けたくないと、ライバルになる少女二人は、ライバルでありながら友達・仲間でもある。

どんな人生でも生き抜こうとする、女子の力強さには感服です。

『世界は「」で沈んでいく』

【著者】櫻いいよ
【出版社】PHP研究所

★主人公
ひとりが好きな凛子ちゃん(中学2年生)

★ページ数
240ページ

★テーマ
友達・価値観・学校生活・家族・ほんわか恋

★入試情報
2024年、浦和明の星中学校の中学入試で出題された

★その他情報
シリーズ化している
1作目『世界は「」で満ちている』、2作目本作、3作目『世界は「」を秘めている』

「友だちは本当に必要か?」「友達がいないのは悪いことなのか?」

胸が締めつけられる青春物語です。

好んでひとりで過ごしていたのに「いじめられている」と両親に誤解され、都会から海辺の町に引っ越すことになってしまった、中学2年生の転校生の凛子ちゃん。
心配してくれている両親のためにも、新しいこの土地でうまくやっていかなくちゃいけないと新しい友達とおしゃべりして笑い合って頑張ってみるのだすが……。

本当の自分を隠して生きるのって辛い
コロナ禍のときに、実はひとりになって「ホッ」とした人が大勢いたように、凛子ちゃんに共感しまくる人が、続出のはずです。

そして、凛子の気持ちを以心伝心で理解してくれる和久井くんがカッコよすぎです。

なにも言わずとも、本当の自分をわかってくれる人に出会うと、ひとりじゃない幸せもあるんだと気づけるのかもしれません。

『あめつちのうた』

【著者】朝倉宏景
【出版社】講談社

★主人公
高校を卒業したばかり社会人1年目の雨宮大地
優秀な弟と比べられ家族と上手くいかず、運動神経ゼロ

★ページ数
文庫本:464ページ

★テーマ
兄弟・家族・父親・多様性・仕事・青春・成長

★入試情報
2022年、山梨県立高校入試で出題された

夏休みの楽しみは高校野球・甲子園という人におすすめの一冊です。

野球は好きなんだけど、運動神経ゼロの大地は高校卒業後、甲子園球場のグランド整備の職人集団「阪神園芸」に就職した主人公の大地のお仕事×成長青春物語が『あめつちのうた』です。

とにかく自分に自信がない大地と、一緒に働く仲間や高校時代のチームメイトなどの悩み多き生き方も重なり合い、読みごたえたっぷり。

華やかな表舞台で活躍している人だけでなく、そこに行きつくまでの人や、その裏で懸命に働いている人たちの、それぞれの人生ドラマが繰り広げられます。

そこで描かれるのは、野球のもつ熱気、本音のぶつかり合い、誰かを想う気持ち。

あちこちに熱い心がほとばしる青春物語に、夏の暑さすら心地よく感じられるはずです。

大地くんは、運動神経はゼロだけど、人の気持ちを考えられる優しさをもっています。
自分に弱さがあるからこそ、人の弱さも理解できる優しい人になれると思うと、弱い自分もちょっと好きになれます。

*単子本「雨を待つ」が改題されたもの

梅雨の時季に長編小説を読むのに挑戦! 小学高学年・中学生におすすめ本リスト まとめ

梅雨の時季に長編小説を読むのに挑戦してみよう!

小学高学年・中学生におすすめしたい本、入試出題本より厳選した21冊を紹介しました。

長編小説だからこそ味わる、いろんな面をみせてくれる登場人物たちとじっくり向き合い、本の世界にひたってみてください。

そして、自分の普段の生活では体験できないことを物語の中では体験できる、読書のすばらしさ、楽しさを感じられるといいですね。

紹介した本をリストにしたので、読みたい本をもう一度確認してみてください。

朝読書の時間などを利用して、気になる本があったら読んでみてくださいね

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